Re:創作文芸のビジョン

http://neo.g.hatena.ne.jp/extramegane/20090529/1243601501

はじめに断っておくと、こういった話題において自分の動機、モチベーションは「雑誌的なもの、読者投稿的なもの」にもとづいており、「新しい何か」というイメージはほとんど持っていません。その上で、今の段階で考えていることを書いてみたいと思います。



…丁寧に長ったらしく書こうかと思ったけど状況が変わったので一発書きで更新する。時間ねぇ。

イメージするのは筒井康隆朝のガスパール」及び「電脳筒井線」。解説は各自調べてください。
「感想」「ツッコミ」が物語に組み込まれていく感覚。朝ガスはほぼ日刊だった、が、(電脳筒井線からの)「反映」にはいくらか時間がかかった。この「反映」の速度がどんどん短くなってきているのが現在なのだと思う。
「感想」「ツッコミ」ですら物語を変えられる。物語は上書きできる。物語は枝分かれできる。過去は改変できる。ここで重要なのは、「どちらの選択肢を選びますか?」といったものではない、ということで、「ある物語」に触発されて、誰かがアウトプットした情報が存在したなら、それは新しい物語になることができる、なってしまう、という。朝ガス冒頭で、キノハラが「隊長は気が狂っている」と指摘したかのように。

  • 「未満」なものをすくいあげるシステム

「なんでも物語だ」と言うのは容易い。けれども、それはやはり、意図を持って切り取られなければ「物語」にならないと思う。つまり「編集」されなければ「作品」は生まれない、ということだ*1。自分で自分の語りを、意図を持ってプロデュースできて、ブロードキャストできる人はいいけれども、多くの人にとって何らかの補助輪は必要だろう。朝ガスにおいての「筒井康隆」「(空間としての)電脳筒井線」といったものが。その補助輪になりうるような現象、試みはたくさん存在しているし、成功しつつあるものも既にあると思う。
思うんだけれども、自分の感覚としては、まだハードルが高いんではないかと思っている。って、あんまり正しくない表現だった。「もっとすくい取れるものがあるのではないか」という感覚なのだと思う。今までの試みは、「電脳筒井線で持論を展開する」レベルの人はすくいとれていると思う。それはすごいことだ。さらにそれを一歩進めて、「隊長は気が狂っている」もすくい取れるようになるのではないか、それが物語の一部として駆動していく未来。
ただこれは、「電車男」がやってしまった、とは言えるかもしれない。そしてあれは数人の、顔の見えない「編集者」がまとめあげてしまった*2中野独人はいない。
「作品未満」のものをすくいあげることは、反映のスパンが短くなったことによって、だいぶ可能性が広がっていっているように思える*3Googleのあれこれがどう使われていくかはまだまだわからないけれども、この「作品未満」がどう扱われていくか、というのは気にしておきたい。

  • 読者投稿的

「システム」だけではすくいとれない。顔の見えない数人の「編集者」では「電車男」にしかならない。「笑犬楼(筒井康隆)」を求めるだけでは話は進まない。だがしかし、これは希望的観測だけれども、「顔の見える編集者」は、まだ可能性があると思う。
「場」を設定し、いわゆる「お題」を決め、「採用」をコントロール*4、そして「期日」を設ける*5。読者投稿的な、そんなイメージ。そういったものが、一人の人間だけに負わされるのではなく、たくさんの人と、そして便利なシステムによって回転していく様子が見たいと思う。

  • 余談

最後に一つ付け加えておくと、「場の設定」は案外重要になるのではないか、と思っている。過去に、フィクションが嫌いだと言うanondの意見やid:y_arimさんの話を受けて、「"実話"というフィルターをかけて情報を処理したい」という欲望は自然だよね、とか書いた。隣の席の人が「お腹痛い」って言ったら「大丈夫?」と気を使うようなものなので、それは自然なことだ。そういった感情とバッティングしないように気を使う必要があるのかもしれない。ネットは基本的になんでも繋げてしまうので、完全に切り分けるのは難しいし、「そこは個人間の人間関係において行ってください」という言い分もあるんだけれども。ここはちょっと語るのが難しい。けど、一応それだけでも書いておく。


とりあえず書いてみた。時間できたらまた考えたい。

*1:「編集」されたものは見る気がしないとかいう人は…数行罵倒した後消した。略。

*2:まとめた後どうなったかは、まあ、そういうこと。

*3:既にある例だと、ニコニコ動画あたりで「仕事が速い」と評されるような作品だろうか。

*4:未来においては「紹介」と「評価」になるだろう。

*5:「反映」のスパンはどんどん短くなっていくが、だからこそこのシステムが求められると思う。「納期がないと僕らモノ作れないですよ」by宮本茂